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リロケーション・ダメージ

 介護の世界で「リロケーション・ダメージ」(Relocation Damage)という言葉がある。「住んでいる場所が変わることが精神に及ぼす悪影響のこと。認知症の高齢者の場合、介護されるために子供の家などへ転居したり、介護施設に住み替えることで、新しい環境や人間関係が精神的なストレスとなり、認知症が急速に進むこと」という。僧侶として高齢者の現場を見てきて、この現象がよく分かる。認知症が進み、遠くの子どもの家、介護施設に移ったとたん、亡くなるケースを何度も見てきた◆こうした現象の背後には、三世代同居がほぼ無くなったという事実がある。2012年の国勢調査で、1~2人の所帯が55・7%、家族が縮小した。三世代同居が全所帯の5%を切った。ある民間の調査結果だが、半径25キロ以内に、子どもが住んでいない高齢者世帯が3割を超すともいう。加えて、高齢者側の事情もある。高齢者の最大の未来に対しての思いは①ポックリ死ぬこと②子どもたちに迷惑をかけないこと。つまり親(高齢者)の側の意思で、長年住み慣れた土地に踏みとどまり、遠くの子の家に移りたくない、遠くの介護施設に入りたくない、そんな思いが強い。たしかに「子どもと住みたい、孫と過ごしたい」という思いと相反する感情で、ぎりぎりまで故郷に踏みとどまる高齢者が多い◆これまで以上に地域の医療・介護・福祉が連携した包括的なケアが必要だと思う。介護度に応じて、選択肢が豊富にあれば、子どもと遠く離れても老後を安心して生活できる。後期資本主義時代に入って、ますますこれから、企業の論理が強くなり、労働の場と、子育て、親の介護の場の分離が大きくなるだろう。そうなった時に、介護・福祉現場の充実は、老年人口の増加と相まってますます必要だと思う。(K)=この原稿は浄土宗出版が発行する機関誌浄土宗新聞2014 年4月号の一面コラム鐸声に掲載されました

| @Temple | 10:25 AM | comments (0) | trackback (0) |

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